数多い熱帯魚の中でも、アピストグラマほど飼育者を虜にする種類はそう多くありません。
アピストグラマは、ブラジルやペルーなどの南米に生息する小型シクリッドの仲間で、80種以上の種類が発見されています。
その種類ごとにヒレの形、体の色彩、体型などに違いがあり、コレクション性が高いことも特徴です。大きさも6~9cm程と比較的小型です。
ちなみに、アピストグラマの事を略してアピストと呼ぶ場合も多いです。また、Apと略して表記されます。
ここで、人生の半分以上アピストを飼育している私が、なぜアピストに魅せられるのかを考えてみました。
アピストにはこれだけ沢山の熱帯魚好きを惹きつける魅力がありますが、今も昔も、他のメジャーな熱帯魚に比べて少しマイナーな印象があります。
是非この魅力あふれるアピストを、より多くの方に知っていただければ幸いです。
アピストが比較的マイナーであるのは、飼育が難しそうだという印象があるためなのではと思っています。
結論から言いますとアピストは丈夫な魚で、飼育方法もポイントさえつかめば楽ちんです。
ここでアピストの基本的な飼育方法を考えてみたいと思います。この基本を踏まえつつ、オリジナルの飼育方法を考えるのもアピストの楽しみ方です。
アピストは小型といっても成長すると6~9cm程(種類によって異なります)の大きさになりますが、アピスト自体は泳ぎも少なくそれほど広いスペースを必要とする魚ではありませんので、30cmキューブ水槽(約27L)程の水槽があれば1ペアの飼育から繁殖まで楽しめます。
アピストは本来流れのあまりない所に住んでいるとされていますので、水流が強くなるようなフィルターは適していません。
水の流れさえ強くなければ、スポンジフィルター、底面式フィルター、上部式フィルター、外部式フィルター、投げ込み式水中フィルターなど、自由に選択できます。
一般的にはスポンジフィルターを使用する場合が多いです。
多くのアピストの生息地は弱酸性の水質をしていますので、簡単に弱酸性にできるソイルが良く使われます。
ただ、生息地と同じ水質にしなければ飼育できないという事はありませんので、極端に水質を変えたり、尖がっているなどでなければ、砂利や砂などお好みのものを低床に使うこともできます。
アピスト自体は丈夫な魚ですので、水替えや日々の管理は他の一般的な魚と大きな違いはありません。
昔からアピストは水替えをしない方が良いという事が言われていますが、必ずしも水替えをしてはいけないという事はなく、他の魚と混泳し、定期的な換水を行っても状態良く飼育できますし、繁殖まで成功させる事も出来ます。
アピストの生息する南米では、雨が少なく水の入れ替えが無い乾季と、雨が多くて水が頻繁に入れ替わる雨季があります。もちろんアピストはどちらの環境でも生息していますので、要はどちらの環境を水槽内で再現するかという事です。
飼育される方の生活リズムに合わせて、通常の魚と同様に定期的な換水をするか、または長期間水替えをせずに足し水だけで飼育するかを選ぶと良いと思います。
エサには粒タイプやフレークタイプ、その他生きエサなど色々ありますが、基本的に馴れればどのタイプのエサも食べてくれます。
例えば、赤色の発色を強くしたい場合には、色揚げ効果の高いエサを与えたり、繁殖を狙いたい場合には、栄養価の高い生きエサを選択してみたりなど、飼育者が色々考えて試してみると面白いと思います。
ここまでアピストの基本的な飼育方法を書いてみました。この飼育法をベースに、飼育者オリジナルの飼育法を考えていくのがアピストの醍醐味であると思います。
アピストは親が子どもの世話をする魚として有名です。
水槽内でもこの子育ての様子を見ることが出来ますので、それを目標にアピストの飼育をされている方も多いはずです。是非アピストを始められたら、繁殖にもチャレンジしてみてください。
アピストはメダカなどとは違い、産卵すると親のペアが卵、稚魚を守ります。
卵は流木やドーム型の筒などの影にくっ付ける形で産みつけますので、水槽内に流木や筒などをセットします。
アピストグラマの卵
順調に行けば産卵を行います。産卵後数日で孵化し、それからまた数日すると稚魚達がエサを求めて泳ぎだします。
泳ぎ出した稚魚にはエサとして、活きたブラインシュリンプを与えるのがベストです。
稚魚の成長にあわせて、ブラインシュリンプと人工飼料を組み合わせて大きく育てます。
稚魚達は基本的には親と同居でそのまま育成できますが、成長に合わせて他の水槽を用意し、ゆったりと育だてるとより立派に育ちます。
順調に育ち成魚になれば、その中から次の世代の親魚を選び繁殖させることにより、大切なアピストの系統維持を続けていくことが出来ます。
なお、同じ親を元に繁殖を続けると血が濃くなり弊害が起きるといわれていますが、数代で問題が起きることはあまりありません。
大切なのは、親魚を選ぶときにはオスはオスらしく、メスはメスらしく、その種類の特徴がしっかり出ている個体を選ぶことです。
何となく難しいイメージがあるアピストですが、この飼育方法を見て頂ければ決して特別難しい魚ではなく、むしろ子育てなど他の魚ではあまりない神秘的な姿を見ることのできる良い魚であることが分かって頂けることと思います。
少しでもこのアピストグラマという魚に興味を持っていただけたら嬉しいです。
ちなみに熱帯魚の世界では、ある魚の人気が上がると、より多くの種類が流通する傾向があります。アピストグラマも昔ブームがあり、その頃は今よりも豊富な種類や産地の入荷(輸入)がありました。
今度は一時のブームではなく、より確固とした分野としてアピストグラマの人気が上がると良いなといつも夢見ています。(水槽屋.com店長)